大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

佐賀家庭裁判所 昭和53年(少ハ)2号 決定 1978年5月02日

少年 M・I子(昭三六・三・七生)

主文

少年を満二〇歳に達するまで中等少年院に戻して収容する。

理由

(本件申請の理由)

1  少年は、昭和五二年七月二五日九州地方更生保護委員会の許可決定により、同年八月一〇日筑紫少女苑を仮退院し、以来佐賀保護観察所の保護観察下にある。

2  仮退院に際し同委員会から法定遵守事項の外に、

(1)  肩書住居の母M・E子のもとに帰住すること

(2)  早く定職につき、地道に働くこと

(3)  不良グループには、絶対に加入しないこと

(4)  自ら進んで保護司に相談し、その指導を受けること

との特別遵守事項が定められ、少年はその遵守を誓約した。

3  しかるに、少年は

(1)  知人の紹介により同年九月一六日より勤務していた佐賀県庁○○課における印刷係としての職務を、担当保護司の説得を無視して同年一〇月四日から無断欠勤を継続したため、同月一一日解雇されるに至り、同日夜から家出、無断外泊をし、母の留守中、自宅に友人を連れ込み喫煙したりして遊ぶなどし、同年一一月末紹介を受けた電信電話局の臨時職員の募集につき担当保護司の助言、指導にも拘らず、応募の意思を示さず、同年一二月にはA(一九年位)と四、五回肉体関係を結んだ。

(2)  昭和五三年一月八日から佐賀市○○町所在の○○○○○(婦人用品販売店)に就職したが、無断欠勤をして同月二六日退職し、翌二七日家出し、友人宅を転々と無断外泊し、その間B(一九年)と六、七回肉体関係を反覆した結果妊娠するに至り、同年二月二三日母に発見されて連れ戻されるまで、衣類、布団等を自宅から持ち出したうえ友人宅を転々として無断外泊を継続していた。

(3)  同年三月一四日家出し友人宅で無断外泊していたが、同年四月一日佐賀市内で父に発見され父のもとへ行つた。同月六日佐賀保護観察所において説諭のうえ、就職先として藤津郡○○町所在の旅館○○○を紹介されたがこれを拒否し、翌七日から再び家出し無断外泊をした。

4  以上のとおり、少年は、勤労意欲に欠け、就職するも落着いて仕事に励むことなく短期日で怠業して退職し、恣意に家出、無断外泊を反覆し、さらに、複数の異性と不純交遊を反覆した結果現在妊娠四ヶ月になり、保護観察官や担当保護司の再三の指導に従わず、かつ、遵守事項を遵守せず、徒らに不健全な生活を継続し、更生意欲が認められない。

家庭にあつては、父母は離婚し、父母と少年との対話、信頼感は極めて乏しく、その保護能力は稀薄で期待できない。

このまま放置すれば、少年は家庭と遊離し、ひたすら不純異性交遊など不良交友関係との親和性を強め、ひいては罪を犯すおそれがあるものと思料される。

よつて、この際、少年を再び少年院に戻し、少年の自覚、反省を促し、勤労精神を涵養し、規律ある生活態度を訓練する等の矯正教育を施し、併せて就職先の開拓等の環境の整備を図つて行く必要があるので、本件申請に及んだ。

(当裁判所の判断)

そこで審案するに、少年の陳述ならびに本件関係記録によれば、本件申請理由のとおり少年は仕事に精励することなく再度短期日に怠業して退職し、恣意に家出、無断外泊を反覆し、複数の異性と不純交遊をした結果妊娠するに至るなどして法定及び特別遵守事項を遵守しなかつたことは明らかであり、過去の不良行動は改善されておらず、従前の少年院における短期処遇の効果は見られず、家庭環境の劣悪化に伴い在宅保護による更生は全く期待し得ない現状に鑑みると、少年を少年院に戻収容し、長期間にわたり厳格な規律ある生活に服させ、適正な職業訓練及び性教育を施すことにより、積極的な勤労意欲と規律ある生活態度を培うことが肝要であり、その収容期間を満二〇歳に達するまでとするのが相当と思料する。

よつて、犯罪者予防更生法四三条一項、少年審判規則五五条、三七条一項、少年院法二条三項により、主文のとおり決定する。

(裁判官 河原畑亮一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例